パンデミック下での発信に期待

Awaiting the Message of Art Amid the Pandemic

美術評論家
清水 康友

美術評論家 清水 康友

 富山国際現代美術展ART/X/TOYAMAは、第8回展より4年の年月を経て本年第9回展を開催する。この間全世界は新型コロナウイルス感染症に襲われ、現在もその脅威は続いている。人類は見えざる敵との先の見通せない戦いを、強いられているのである。

 コロナ禍により日常は失われ、様々な活動が中止や制限を受けたが、美術・アートも例外ではない。2020年日本では多くの美術館、画廊等が休館休廊し、展覧会の殆どが中止となった。この影響は甚大で、美術業界への打撃の大きさを計り知れない。コロナ感染拡大防止のため、その危険性の少ない施設まで全てを閉鎖し、美術は不要不急の存在とされた。

 多くの人々がコロナ禍で心身を痛めている時、その心を癒し健全化する美術に対する無理解に、日本文化の貧困さを感じざるを得なかった。新聞、TV等のマスコミは日本文化の後退を取り上げたものの、その対象はコンサート、演劇等の舞台芸術が大半で、残念乍ら私達が係わる美術に触れたものは殆ど見当たらなかった。

 しかし、本年ART/X/TOYAMAは開催される。富山という地で、地元作家の思いと情熱により立ち上げられた本展は、極めて稀な国際美術展である。その強い意志と思考と団結が、今日まで本展を支えてきたといえる。どれ程の精力と熱情を込めて、美術家が制作に当たっているかを今こそ示す時である。美術家は制作する事が一番の使命だが、それを公開発表し世に問うのも大切な役割である。

 それは取りも直さず本展が掲げる、富山発信の現代美術の“発信”に他ならない。発信はどこからでも可能であり、発信しなくてはいけない。閉じずに開くこと、常に世界に向けて開いていることが重要である。パンデミックの中、美術の有用性を人々に再認識してもらいたい。

 第9回富山国際現代美術展2022ART/X/TOYAMAが、コロナ禍の全世界に放つ美術・アートの力に、心から期待を寄せるものである。